日常的に運動不足の女性は骨減少症リスクが高い。
骨減少症はホルモンの変化に加え、喫煙、運動、食事などの修正可能な危険因子に関連する。
栄養面では、カルシウム、ビタミンD、タンパク質といった栄養素は、閉経後女性の骨密度(BMD)と関連し、骨格系障害を予防することが知られている。
栄養パターン(NP)は、食事と慢性疾患との関係を調べるための方法で、食品成分を互いに相関する度合いに基づいて、相互作用、累積効果、相乗効果を評価できる。
高齢者、特に閉経後女性におけるNPとBMDの関係が最近注目されており、研究ではタンパク質、カルシウム、ビタミンB12など、動物性・植物性由来の栄養素を多く摂取する複合NPはBMDと正の相関を示し、動物性由来栄養素パターンと植物性由来栄養素パターンは相関を示さないことがわかっている。
20年間の追跡調査を行った研究では、動物由来食品を多く含む栄養パターンは高齢者の骨折リスクの高さと関連していることが明らかになっている。
イラン人の閉経後女性151名を対象とした研究では、葉酸、食物繊維、ビタミンB6、カリウム、ビタミンA、ビタミンC、β-カロテン、ビタミンK、マグネシウム、銅、マンガンを豊富に含むNPと腰椎BMDとの間に正の相関が観察されている。
一方で、カルシウム、ビタミンD、タンパク質など、骨の健康に不可欠と認識されている栄養素を含むNPはBMDと関連していなかった。
オーストラリアの閉経後女性101人を対象にした研究では、リボフラビン、リン、カルシウム、カリウム、ビタミンB6、炭水化物、マグネシウム、チアミン、ナトリウム、鉄、ヨウ素、ナイアシン、ビタミンB12を豊富に含むNPが、腰椎と大腿骨頸部のBMDと正の相関があることを報告している。
今のところ、閉経後女性におけるNPとBMDとの関連についての研究は少ない。
先行研究の結果の不均一性と、BMDに対応する決定的なNPがないことを考慮すると、どのパターンが骨量に関連し、結果として骨減少症や骨粗しょう症などの疾患の発症につながるかを明らかにする必要がある。
リンクの研究は、閉経後女性におけるNPを特定し、BMDカテゴリーと関連付けることを目的としたもの。
平均年齢66.8歳±6.1歳の女性124名が対象。
このうち41.9%が骨減少症、36.3%が骨粗鬆症だった。
ビタミンB12、パントテン酸、リン、リボフラビン、タンパク質(総量および動物性)、ビタミンB6、カリウム、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、コレステロール、β-カロテン、オメガ3、マグネシウム、亜鉛、ナイアシン、セレンで特徴付けられるNP1と、 鉄、植物性タンパク質、チアミン、葉酸、繊維、PUFA、ビタミンA、ビタミンK、α-トコフェロール、銅、ナトリウム、レチノールを特徴とするNP2は、骨減少症との関連性が高いことが判明。
閉経後女性がNP1およびNP2の摂取量が少ないことは、骨粗鬆症ではなく、骨減少症のリスクが高いことと関連していた。
Nutrient Patterns and Risk of Osteopenia in Postmenopausal Women
・NP1;ビタミンB12、パントテン酸、リン、リボフラビン、動物性たんぱく質、総たんぱく、ビタミンB6、カリウム、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、コレステロール、βカロテン、オメガ3、マグネシウム、亜鉛、ナイアシン、セレンの摂取は骨減少症と負の相関を示した。
NP1消費量が少ないほど、閉経後女性のBMDが低下するリスクが高まる。
・NP2;鉄、植物性タンパク質、チアミン、葉酸、総繊維、PUFA、不溶性繊維、ビタミンA、ビタミンK、α-トコフェロール、銅、ナトリウム、レチノールの摂取でも負の相関が見られた。
NP1およびNP2は、骨の健康に重要な栄養素を多く含んでおり、骨減少症と関連があると結論づけられる。
・炭水化物、水溶性食物繊維、総糖類、ビタミンCを多く摂取し、総脂質、飽和脂肪、MUFAが少ないことを特徴とするNP3は骨減少症および骨粗鬆症と関連がなかった。
・閉経後女性を対象とした試験では、水溶性コーンファイバーの摂取によって骨カルシウムの保持量が増加し、骨カルシウムのバランスが改善された。
ラット研究では、水溶性食物繊維は全身の骨塩量と大腿骨BMDを増加させ、骨折に対する抵抗力を高めた。
・フラクトオリゴ糖(FOS)は、ラットのカルシウムとマグネシウム吸収を増加させ、骨のミネラル化を促進した。
・水溶性食物繊維は、不溶性食物繊維よりも骨の健康に対してより多くの利益を示すようだ。
水溶性食物繊維が骨の健康に大きな役割を果たすのは、発酵の度合いと粘性が高いためと考えられる。
今回の研究では、総繊維と不溶性繊維(NP2)だけがBMDと関連していた。
結論
閉経後女性は、ビタミンB12、パントテン酸、リン、リボフラビン、動物性タンパク質、総タンパク質、ビタミンB6、カリウム、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、コレステロール、β-カロテン、オメガ3、マグネシウム、亜鉛、ナイアシン、セレン(NP1)に富む栄養パターンの消費が少ないと骨減少リスクが高くなる。
鉄分、植物性タンパク質、チアミン、葉酸、総繊維、PUFA、不溶性繊維、ビタミンA、ビタミンK、α-トコフェロール、銅、ナトリウム、レチノール(NP2パターン)に含まれる栄養素は、野菜や牛乳およびその派生物を多く含む食事に特徴的である。
また、骨の健康維持には必須栄養素、特にカルシウム、リン、マグネシウム、タンパク質、ビタミンB12補給が重要であることが示された。