肥満は高血圧、冠動脈疾患、2型糖尿病、心理的問題、癌、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など、合併症や代謝障害を患う可能性が高くなる。
NAFLDは、アルコールを大量に摂取せずとも肝臓に脂肪酸が過剰に蓄積される病気で、重症度は単純な脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎(NASH)まで様々で、肝硬変や肝がんにつながる可能性もある。
NAFLD、特にNASHには、数多くの臨床試験が進行中であるにもかかわらず承認された治療法はない。
NAFLDの進行を抑制・遅延のために、いくつかの天然化合物の試験が行われているが、中でも肥満の代謝障害に対するBrassica oleracea副産物(BBPs)の生物学的可能性は非常によく知られている。
Brassica oleracea種の中ではブロッコリー(Brassica oleracea var italica)が肥満の治療を助ける潜在的な候補として浮上しており、大量のグルコシノレートすなわちスルフォラファン前駆体であるグルコラファニンを含むのがその理由として挙げられている。
BBPに含まれる有名な化合物には、フェノール、グルコシノレート、カロテノイド、アスコルビン酸など抗酸化作用を示すものがある。
リンクの研究は、ヒト肝癌HepG2細胞を用いた遊離脂肪酸(FFA)誘発性脂肪毒性の in vitro モデルにおいて、ブロッコリー(Brassica oleracea var italica)の3種類の抽出物の影響を調査したもの。
ブロッコリーの葉、茎および花序の抽出物は、HepG2細胞の細胞生存率を用量依存的に低下させた。
しかし、葉、茎、花序の最大非致死濃度(10μg/mL)では、HepG2細胞のミトコンドリア機能および中性脂質の蓄積を損なわないことが確認された。
ブロッコリー抽出物は、コ・インキュベーションまたはプレインキュベーション戦略のいずれにおいてもHepG2細胞におけるFFA誘発性脂質蓄積を有意に減少させた。
ブロッコリー抽出物にはHepG2におけるFFA誘発カタラーゼ活性の低下を防ぐ能力がある。
・ブロッコリーはBrassica oleracea種の中で最も総フェノール量とフラボノイド量が多く、これはこの作物の高い抗酸化能と関連している。
この研究のデータでは、ブロッコリー抽出物はHepG2細胞において用量依存的な毒性を示したが、最大無毒性濃度(10µg/mL)ではミトコンドリアの酸素消費率に影響を与えないことが明らかになった。
さらに、抽出物はt-BHP誘発の酸化的細胞障害には効果がないにもかかわらず、ヒトHepG2細胞において生理的濃度以上の脂肪酸の下で脂質滴の蓄積を有意に減少させることがわかった。
脂肪酸処理した細胞では細胞内レベルに影響はなかったが、カタラーゼ活性は著しく低下した。
ブロッコリー抽出物、特にE1(葉)はFFAによるカタラーゼ活性減少を有意に抑制した。
・NAFLDには脂質およびその誘導体の過剰蓄積による弊害が関与する。
Nrf2関連の抗酸化系は、NAFLDにおける酸化ストレス亢進に重要な役割を果たす。
Nrf2活性化はin vitroおよびin vivoでNAFLDによる炎症、血清および肝内脂質レベル、肝臓の病的変化を効果的に改善することができ、Nrf2がNAFLD治療の有望なターゲットであることが示されている。
ブロッコリー抽出物から単離されたフィトケミカルであるスルフォラファンはNrf2標的酵素であるNQO1を誘導する。スルフォラファンは、S-β-チオグルコシドNhydroxysulfate(グルコシノレート)であるグルコラファニンの加水分解産物である。
結論
in vitroにおいて、超生理的濃度の脂肪酸にさらされた肝細胞の脂質蓄積を減少させるBBP抽出物の可能性を示した。
この効果はNAFLD予防と治療におけるBBPの可能性を強調する。
同じ種であっても、異なる国の植物に由来し、異なる季節に採取された植物抽出物についても地域間および時間的な差異に関するさらなる情報を得るために試験を行う必要がある。
NAFLD動物モデルを用いたin vivoの概念実証でBBPの効果を検証し、その肝保護活性を実証する必要がある。