今回ご紹介するデータは、多くの人の「認知・行動」の中に含まれる「飲食」について。
近年、飲食行動は心身の健康、幸福、人生の意義に関連するという説を支持する証拠が増えている。
例えば、摂食障害は食行動に関する精神障害の一種で、人々の思考や感情と関連性が高い。
過去の研究では、伝統的な食べ物は慣れ親しんだ味や香りは患者の帰属意識や幸福感を高めることが分かっている。
別の研究では、ベジタリアンはセミベジタリアンや雑食の人と比べて、自尊心が低く、心理的適応度が低く、有意義な人生を送れず、ネガティブな感情が強いことが分かっている。
さらに、人生の意義とアルコール消費も関連していることが報告されている。
潜伏性トキソプラズマ症と過度のアルコール摂取には関連があり、トキソプラズマ感染は中枢神経系障害の発症につながり、交通交通事故、自殺、精神疾患において大きな役割を果たすことが観察されている。
また、慢性的なアルコールの大量摂取は心臓や血管系のリスク因子である。
さらにアルコール依存症患者は、他の多くのグループよりも孤立感を感じ、人生の多くの物事に不満を抱いている。
これらの知見は、食行動が人々の思考、感情、健康に影響を与えることによって、「人生の意義」にも影響を与える可能性を示唆している。
過去の研究で、「人生の意義」の低さはより高レベルの抑うつ症状と関連することが示されている。
飲食行動とうつ病の関連性のメカニズムを探る実験的研究では、ザクロジュースに含まれるポリフェノールが酸化還元経路を通じて神経保護機能を発揮しアルミニウムによって誘発される雄マウスの不安やうつ様行動を緩和することが実験的に証明された。
また、フラボノイドを豊富に含むオレンジジュースの摂取はヒトの腸内細菌叢を調節し、うつ病の予防と治療につながる可能性がある。
オリーブジュースには抗酸化活性物質として働くオリーブポリフェノールが多く含まれており、マウスのうつ病を改善する効果がある。
その他、ベリー系のジュースは不安やうつ病のような行動を抑えることが実験で確認されている。
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインが中枢神経を刺激し、ドーパミン神経伝達を高めて抑うつ状態に拮抗するため、コーヒーや紅茶の摂取も抑うつリスクの低減と関連する。
また飲食行動は、睡眠の質、身体の健康、精神病理、攻撃的行動と関連する。
例えば、果物、お茶、ココアなどに豊富に含まれるフラボノイドやポリフェノールはうつ病のリスクを低減させることがいくつかの研究によって報告されている。
青年期初期のエネルギードリンクやコーヒーの消費は、うつ病様の精神病理症状と関連することが示されている。
また、ソフトドリンクの消費は攻撃的な行動の主要な危険因子であり、多くの慢性疾患と正の相関がある。
一方で、飲食行動は精神的健康を含む複数の領域と関連するが、過去に飲食行動と人生の意義との関連を直接的に検討したもの研究はない。
リンクの研究は、プライマリーケア専門職を対象に、うつ病をコントロールした上で飲食行動と人生の意味との関連を検証することを目的とした中国の研究。人生の意義は、Stegerらが開発したMeaning in Life Questionnaire(MLQ)を用いて測定。
結果
うつ病をコントロールした上で、牛乳の常飲、フレッシュジュースの常飲は人生の意義の高さと関連し、水の常飲は人生の意義と負の関連があることが支持された。
さらに、高齢であること、予防医学を専攻していること、週当たりの勤務日数が少ないこと、技術職資格を持っていること、うつ病でないことは、人生の意義と正の相関があることが示された。
・本研究は飲食行動と人生の意義の関係を調べた最初の研究。
・牛乳とフルーツジュースを定期的に飲むことは、人生の意義レベルが高いことと関連した。
しかし、水を定期的に飲むことは人生の意義を低くすることと関連していました。
・他の変数についても分析を行い、年齢、予防医学専攻、週当たりの勤務日数、免許(助手)技師資格、うつ病も人生の意義と関連していることが支持された。
・まず、牛乳を定期的に飲むことは人生の意義と正の相関があることがわかった。
このメカニズムを説明する一つの可能性として、牛乳を定期的に飲む人はうつ病の発症リスクが低いということが挙げられる。以前、米国の成人を対象とした研究では、牛乳や乳製品からのタンパク質摂取がうつ病症状のリスクを下げる可能性があることが実証されている。
また、牛乳に含まれるリン脂質には神経保護作用があり、うつ病リスクを低減する可能性がある。
・フレッシュフルーツジュースを定期的に飲んでいる人は、人生の意義も高い。
果汁に含まれるポリフェノールやフラボノイドは体のメカニズムにさまざまな影響を与えるため、うつ病リスクを低減させる。うつ病は人生の意義とネガティブな関係がある。
したがって、牛乳やジュースを定期的に摂取することはうつ病リスクを減らすことによって人生の意味づけを向上させる可能性がある。
・この調査では、定期的に水を飲むことも注目すべき重要な要素であることが判明。
定期的に水を飲む人は人生の意義が低いことがわかった。
過去の研究で、人生の意義は気分や認知と密接な関係があることが明らかになっているが、水分補給状態の変化は人の気分や認知に影響を与える可能性があり、研究の多くは脱水や過剰な水分摂取が人体に与える影響に着目している。
水分摂取の動機には喉の渇きや体液調節の必要性がまず挙げられるが、これに加えて退屈や悲しみも過剰な水分摂取の決定要因となる。
水を常飲する人々は常に喉が渇く脱水状態にある可能性があり、退屈、不安、鬱の発生も頻繁に水を飲む行動の一因となる。
これらの理由はすべて、感情的・認知的不協和を引き起こし、その結果人生の意意義を失わせることになる。
・お茶やコーヒーの常飲は人生の意義が高く、炭酸飲料やアルコールの常飲は人生の意義が低いという傾向があった。研究から得られた累積的な証拠は、お茶やコーヒーの消費と様々な健康上の利点とを結びつけている。
アルコール乱用はトキソプラズマ症や心血管イベント発症など、健康に害を及ぼすことが実証されている。これに加えて、過度のアルコール摂取は人生の意味と負の相関があることが示されておりこの研究と一致する。
・人生の意義が低い人ほど職業上の完璧さを追求することから生じる累積的ストレスや、人格領域における深刻な感情的欠陥のはけ口としてアルコールを乱用している。
アルコール摂取の動機づけは個人が人生から得る感情的な満足度を高める。
また、炭酸飲料の定期的な摂取は、肥満やその他の健康上の有害な結果と関連することが示されている。
・最近の研究では、人生の意義が健康行動に関連し、リスク認知が媒介的な役割を果たすことが示唆されている。人生の意義が高い人は、より高価な飲料、あるいは健康に良いという評判の飲料を選ぶ可能性があることを示唆している。
・飲食行動と人生の意義の関係については、摂取する食べ物や飲み物が神経細胞やシナプスの可塑性など脳のいくつかの機能領域に影響を与え、人の認知、感情、心理的幸福に影響を与えるという説明が可能かもしれない。
これまでの研究で、人生の意義は摂食障害や食べ物に対する否定的な態度と負の相関があることが分かっている。摂食障害のある人は生活の質が低く、気分障害も経験しており、これらは人生の意義と負の相関がある。
・高齢者の方が若年者よりも人生の意義を強く感じていることがわかった。年齢とともに人生の意義スコアが上昇する。この結果は、人は通常、社会的・情緒的発達を中心とした一連の段階を経るというエリク・エリクソンの心理社会的発達理論によって支持される。具体的には、人は年齢を重ねるごとに自分のアイデンティティに対する理解や認識が進化し、その過程で人生の意義も増していくというもの。
・うつ病は人生の意味と関連する重要な因子だった。これは先行研究における知見と一致している。うつ病は意義の創造や維持に用いられるポジティブな出来事や情動を減少させる。
うつ病の症状を持つ高齢者は特に、人生を無意味なものと認識しやすい傾向があることが示された。
・仕事に関する変数と人生の意義との関係も分析。
ライセンス技術者の地位は、その人の診療能力が世間や国から認められ、より良い機関や組織で働くことができることを意味する。既存の文献では、仕事における意義は人生の意義と正の相関があり、仕事が人生の意義の強い源であることが示唆された。
また、週当たりの労働日数が人生の意義と負の相関があることが裏付けられた。
長時間労働はより悪い精神的健康、不安や抑うつ症状のレベルの上昇と関連することが示されている。これらの否定的な症状はすべて、人生の意義を低くする。
・他の診療科目に比べて予防医学の人生の意義が高いのは、職業的アイデンティティの強化や個人的価値観によるものと思われる。武漢肺炎パンデミックが、医学と公衆衛生に治療よりも予防と健康を優先させるように促した結果である。