サッカー選手に後発するスポーツ障害の一つに鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)があります。下腹部や鼠径部、恥骨部、内転筋近位部、睾丸周囲に痛みが出るのが特徴です。
原因はオーバーユースによる組織の炎症や硬縮、骨盤や股関節への過剰な機械的負荷が挙げられます。
先日も女子サッカー選手の方が恥骨付近の痛みを訴えて来院されました。
触診では恥骨付近と腹筋下部、内転筋近位部に圧痛。
念の為恥骨の疲労骨折の検査も行いましたがネガティブ。
治療のほうはまず仙腸関節、恥骨結合(左右の恥骨の高さの差)のモビリゼーション。モビリゼーション後はやや痛みが引いた程度。
そこで次は軟部組織の治療に移行。治療中は都度部位ごとに痛みの変化を聞いていくのですが、最も反応が良かったのが長内転筋と錐体筋の恥骨上での結合部への治療後。
この二つの筋肉は上恥骨靭帯を介して解剖学的に癒合している組織です。
メインは恥骨稜の長内転筋腱と錐体筋の癒合部位の炎症および硬縮が原因と思われます。触診時の腹筋下部と内転筋の圧痛はその関連痛が表れていたのかなという印象。
腹筋下部の圧痛は腹直筋の可能性もありましたが、腹直筋は内転筋と癒合しておらず、内転筋と腹筋下部両方の圧痛という条件に一致しませんので深追いはしませんでした。
全ての治療終了後はご本人も納得の表情でした。
しかし問題は再発。
1~2週間安静にして様子を見るとともに、復帰前の準備としてのトレーニング内容をお伝えしてこの日は終了。
患部の様子を見てメンテナンスに来られる予定となっています。