ビタミンDのインフルエンザ感染予防効果に関する研究は過去にいくつか報告されているが、その結果は一貫していない。
仮にビタミンDの補給がヒトの免疫機能を向上させ、インフルエンザの感染予防に効果があるのであれば、非常に手軽な予防法として周知されるべきだ。
リンクのデータは、ビタミンDのインフルエンザリスクに対する効果を明らかにすることを目的としたRCTメタ分析。
PubMed、Cochrane library、Embase、Chinese Biomedical Database(CBM)の検索により、ビタミンDとインフルエンザとの関連に関するRCTを、開始から最終更新日2011年11月10日までに同定。異質性はCochranのQ検定とI2統計で評価し、メタ分析はランダム効果モデル。
10試験、4859人がスキャニングで適格となった。
ビタミンD補給はインフルエンザ感染リスクを有意に減少させることが示された。
メタアナリシスにより、ビタミンDの摂取がインフルエンザ予防に有効であることが裏付けられた。
インフルエンザ予防戦略は、ビタミンDの補給によって最適化することができると結論。
Association Between Vitamin D and Influenza: Meta-Analysis and Systematic Review of Randomized Controlled Trials
・ビタミンD補給によるインフルエンザ予防効果のメカニズム
最近のレビューは、物理的バリア、細胞性自然免疫、適応免疫の3つに分類している。
マクロファージ、好中球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、CD4、CD8など自然免疫と適応免疫に関与する細胞は、表面にビタミンDレセプターを有している。
カルシトリオールは、内分泌、パラクリン、オートクリン機構を介してビタミンD受容体に結合し、遺伝子転写に影響を与えることにより、局所免疫機能を制御している。
・今回のメタアナリシスはビタミンD補充のインフルエンザ感染に対する予防効果を示し、複合リスク比は0.78であることを示した。
これまで誰も同じ解析を行っていないため、比較することは困難である。
・冬季インフルエンザのピークは多くの中・高緯度国で、太陽紫外線量、つまり25(OH)D濃度が最も低くなる季節と一致している。したがって、ビタミンDの補給が冬季のインフルエンザの予防により効果的であることは合理的と考えられる。
冬は緯度に沿って紫外線b(UVB)量が減少し、緯度40度以上の地域ではUVBによるビタミンD産生量が激減する。
・乳幼児は家にいることが多いため日光に当たらず、ビタミンD3の皮膚合成が減少する可能性がある。
また、25(OH)D濃度は加齢とともに低下する傾向にある。
高齢者も乳幼児も免疫力が低下しており、インフルエンザウイルスに感染しやすくなっていることから、ビタミンDのインフルエンザ予防効果は乳幼児や高齢者においてより顕著に現れると推測される。
・ビタミンD代謝産物は様々な呼吸器系ウイルスの免疫反応に異なる作用を及ぼし、サイトカインの分泌を調節する。A型インフルエンザとB型インフルエンザとではサイトカインの分泌パターンが異なるため、ビタミンDのインフルエンザA型とインフルエンザB型に対する予防効果も異なる可能性がある。
ビタミンDがインフルエンザAの発症を抑制するが、インフルエンザBの発症を抑制しないと報告する日本の研究もある。
・今回のメタアナリシスでは、ビタミンDの摂取がインフルエンザ予防に効果があること、サブグループ解析(冬季 vs 全季節)により、冬季のビタミンD摂取が全季節よりもインフルエンザ予防に効果があることが裏づけられた。
医薬品やインフルエンザワクチンと比較して、安全性と骨の健康維持など他の多くの利点がある。
ビタミンDはインフルエンザワクチンの免疫学的効果に影響を与えないため、、すべての世代で冬期はインフルエンザ予防のためにビタミンDを補充し、必要であればワクチンを接種することが推奨される。
・このメタアナリシスはRCTに基づいて行われたので、エビデンスレベルは非常に強い。
このメタアナリシスは、栄養ガイドラインの作成に理論的な根拠を与えることができる。