植物由来イソフラボンはエストロゲンに類似しており、植物性エストロゲンとして分類されている。
イソフラボンは細胞増殖を促進し、抗酸化物質として働き、抗炎症作用や抗がん作用を発揮するなど、複数の経路を通じて女性の健康を調節する可能性がある。
イソフラボンサプリメントの摂取は、エストロゲン感受性の高いがんリスクの低減、骨密度の低下抑制、血糖コントロールの改善などの効果もある。
さらに、イソフラボンの補給は尋常性ざ瘡(にきび)やジヒドロテストステロン(DHT)循環レベルの低下にも有効であることが示されている。
総じて、大豆イソフラボンは閉経前、閉経期、閉経後を問わず、女性のホルモンシフトをサポートすると考えられる。
イソフラボンをはじめとする植物性エストロゲンは皮膚組織においてヒアルロン酸濃度とコラーゲン含有量とその質を高め、細胞外マトリックスタンパク質の合成を刺激する。
ある研究では、閉経後女性にイソフラボンを多く含む大豆抽出物を6ヶ月間使用してもらったところ、上皮の厚さ、弾力性、コラーゲン繊維の量、血管新生が有意に増加したことが示されている。
また、大豆イソフラボンにはセリンプロテアーゼ阻害剤も含まれており、皮膚周囲のケラチノサイトへのメラニン色素の移行を最小限に抑える。
閉経後女性はホルモンバランスの変化とコラーゲン合成の減少により、顔の老化が進みやすい。
皮膚の老化は多因子性のプロセスだが、栄養と食習慣が酸化ストレスと炎症を調節し、このプロセスを加速させる可能性があるという証拠が増えている。
フィッツパトリックの肌タイプも皮膚の老化に関与している。
フィッツパトリック・スキン・フォトタイピングは、日光にさらされた後の日焼けしやすさに基づいて肌をタイプ1から6に分類するもの。
一般にこの指数が高いほど火傷よりも日焼けしやすく、メラニン量が多い。したがって、紫外線に敏感で、日焼けよりも火傷しやすい肌タイプ1、2、3は光老化が加速する可能性がある。
過去の研究では、食品ベースの介入が皮膚の老化を調節する効果があることが証明されている。
例えばカロテノイドが豊富な食品を摂取することで、光保護効果があることが示されている。
ある研究では、リコピンとルテインを含むトマトの栄養複合体が紫外線誘発性酸化ストレスや光老化を示す分子のアップレギュレーションを抑制することがわかっている。
また、β-カロテンを豊富に含むアタウルフォ・マンゴーを85g食べると、閉経後女性のシワのが有意に減少することがわかっている。
カロテノイドが豊富な食品はプロビタミンA活性を発揮し、その結果、細胞分化を調節して表皮の増殖を増加させ、光老化を遅らせる。
ビタミンE(α-トコフェロール)などの抗酸化物質を多く含む食品も、顔のしわや色素沈着に関与している。アーモンドはα-トコフェロールを含む食品の一例である。
フィッツパトリック肌タイプ1~3の閉経後女性を対象に16週間または24週間アーモンドを毎日摂取させた二つの研究では、シワの程度と顔の色素沈着が有意に減少したことが実証されている。また局所的には、α-トコフェロールが目の下のくまや目のしわを軽減することが確認されている。
リンクの研究は上記の予備的研究を基に、イソフラボンを含む大豆タンパク質(SPII)と、イソフラボン無添加カロリーマッチカゼインタンパク質を比較研究したもの。
イソフラボンを添加した分離大豆蛋白(SPII)の経口補給が、閉経後女性において、顔のしわや色素沈着などの光老化の構成要素や、皮膚の保湿や皮脂排泄などの皮膚生物物理学的指標にどのような影響を及ぼすかを調査している。
6ヵ月間、フィッツパトリック皮膚タイプI、II、IIIの閉経後女性44人を対象に実施。カゼ
インプロテインまたはSPIIのいずれかを投与する群に無作為に割り付け。
高解像度の顔面写真システムを用いて、0週、8週、16週、24週の時点でのしわの程度と色素沈着を測定。
結果
SPII介入群では16週目と24週目に、ベースラインと比較してシワの平均重症度がそれぞれ5.9%と7.1%減少した。
またカゼイン群に比べ、16週目と24週目の平均シワ度が有意に減少した。
顔面の色素強度は24週目に-2.5%減少したが、カゼイン群では有意な変化はみられなかった。
SPII群では24週目に皮膚の水分量が左右の頬でそれぞれ39%、68%有意に増加した。
皮脂分泌には有意差は認められなかった。
イソフラボンを含む食事性大豆タンパク質の補給は、フィッツパトリック皮膚タイプI、II、IIIの閉経後女性において、シワや色素沈着を含む皮膚の光老化を改善し、皮膚の保湿を増加させる可能性がある。
・24週間、50mgのイソフラボン含有大豆タンパク粉末を1日30g摂取することで、24週目にシワの程度、色素沈着、保湿に有意な改善がみられた。この結果は、日焼け止めの使用や日焼け防止衣服の着用などの日焼け防止習慣に加え、皮膚の光老化で生じる皮膚のシワや色素沈着を軽減するために大豆タンパク質由来イソフラボンを補助的に使用することを支持するものである。
・この研究結果は、フィッツパトリック皮膚タイプ1~3の閉経後女性において、シワや顔面の色素沈着などの顔面皮膚の光老化の徴候を改善するために、イソフラボン含有大豆タンパク質サプリメントの使用を支持するものである。
・カゼインタンパク質群と比較して、SPII群では16週目と24週目にシワの重症度が有意に減少し、24週目には平均色素強度が有意に減少した。
・大豆イソフラボンがシワの重症度と色素強度を改善するメカニズムは、抗酸化作用、コラーゲン促進作用、色素沈着抑制作用に関係している可能性がある。活性酸素によって生じる細胞内外の酸化ストレスは皮膚の光老化と色素沈着を促進する。抗酸化物質は、肌の光老化や色素沈着を促進する活性酸素を消去する。
・大豆由来製品は、メラノソームのケラチノサイト貪食を阻害するセリンプロテアーゼ阻害剤を通じて色素沈着を軽減する。
・SPIIの補給が顔の色素沈着の改善につながるという知見は、他の文献でも支持されている。大豆ベース抽出物は局所的に塗布すると顔の色素沈着を軽減することが示されている。イソフラボンがチロシナーゼ活性の阻害、メラニン生成の抑制、メラノサイトのα-MSH刺激に対する反応性の低下など、複数の作用機序を通じて作用するようだ。この結果は、統計的に有意であるだけでなく、臨床的にも有意である。
・運転者が左側で紫外線(UV)曝露を経験する米国では、悪性黒色腫とメルケル細胞癌は顔面または腕の左側に発生する可能性が有意に高かった。ある研究では、すべての皮膚がんの種類と性別を含め、左側により多くの皮膚がんが発生することがわかった。
・大豆イソフラボンは皮膚中ヒアルロン酸濃度を増加させることが示されており、これはSPII補給群で認められた皮膚の水分補給の増加と相関している可能性がある。ヒアルロン酸は細胞外マトリックスの重要な構成成分であり、水分を皮膚に取り込み保持する生体保湿剤として働く。
従って、大豆は皮膚のヒアルロン酸の天然レベルを増加させ、皮膚の保湿を高め、小じわの減少に寄与すると考えられる。
・閉経後女性など、エストロゲンが欠乏した皮膚は、コラーゲン、エラスチン、線維芽細胞の機能、血管が失われるのが特徴。また、細胞の劣化が進み、乾燥、萎縮、シワ、酸化ストレスに対する防御力の低下などを引き起こし、これらすべての変化が肌の老化を引き起こす。
・大豆タンパク質の補給は腸内細菌叢を多様化させる可能性がある(腸皮膚軸のシグナル改善)。
・今後、脱毛からニキビ、膣機能サポートに至るまで、女性の健康におけるSPIIの役割が再評価されるべきである。
・この研究では50mgのイソフラボンを含む大豆タンパク質の使用を評価。豆腐、豆乳、豆乳ヨーグルト、枝豆などの大豆由来食品を毎日摂取することで、同程度のイソフラボンを摂取することができる。
・大豆イソフラボン摂取量の増加は、閉経前および閉経後女性における乳癌リスクの低下と関連していた。また、大豆イソフラボンの摂取量とがん全般との相関関係を評価したシステマティック・レビューによると、大豆イソフラボンの摂取量の増加はがん罹患率の低下と関連していた。
大豆イソフラボン摂取量が10mg/d増加するごとに、がんリスクが4%減少ことが示されている。さらにメタア解析では、イソフラボンの摂取が乳癌の再発と乳癌特異的死亡率を減少させることが指摘されている。