食品・栄養素に関する情報が氾濫する中で、「結局何を選べば?』という疑問から食品選択に効率性を求める方が増えている。
今回はそんな方のために、栄養密度の高い食材一覧をまとめ。
特に妊娠適齢期の女性や鉄欠乏を指摘されている方には参考になる。
読むのがめんどくさい方は下の一覧に目を通すだけでも簡単に把握できると思う。
一般に低・中所得国(LMICs)では、食事に含まれるビタミンやミネラルなどの微量栄養素が欠乏していることが知られており、特に鉄、亜鉛、葉酸、ビタミンA、カルシウム、ビタミンB12(以下「重点微量栄養素」という)の欠乏は深刻な影響を与える可能性がある。
人口減少が止まらず、約20前と比べて30代半ば~50代半ばの所得が100万円超減少した我が国もLMICsの仲間入りに向けて直滑降状態だが、農薬基準やトランス脂肪酸の使用基準など食品の品質管理がユルユルの現状、微量栄養素の欠乏などという上品な話題どころではない惨状を呈していると言えるのではないだろうか?
我が国でもっとも簡単に手に入る高エネルギー密度の超加工食品(UPF)は、多くの非伝染性疾(NCD)や死亡率上昇に関連している。
UPFsは多くの高所得国でもカロリー摂取の大部分の割合を占め、ほとんどのLMICsでもその消費率は急速に増加している。
エネルギー密度の高い超加工食品は嗜好性が高く過剰消費と体重増加につながる傾向があるため、近年のメタボリックシンドロームの急激な増加もうなずける。
全体的な食事の質、特に優先的な微量栄養素を多く含む食品の量と多様性を改善することは、微量栄養素欠乏リスクを減らすと同時に、UPFsへの移行とそれに伴うNCDs増加を最小限に抑えるために極めて重要といえるだろう。
リンクのデータは、一般に不足している微量栄養素の上位食品供給源を特定し、様々な集団の微量栄養素欠乏の改善に貢献することを目的としたもの。
方法
世界的な食品組成データベースを構築し、必要量が異なる 5つの集団の推奨栄養摂取量を算出。
必要な栄養素が異なるさまざまな集団について、優先的な微量栄養素の密度に従って食品を評価するアプローチを開発。
結果
優先微量栄養素の上位供給源は、内臓、小魚、濃い緑葉野菜、二枚貝、甲殻類、ヤギ、牛肉、卵、牛乳、骨付き魚の缶詰、マトン、羊肉であった。
チーズ、山羊乳、豚肉もよい摂取源であった。
さらに、ヨーグルト、鮮魚、豆類、テフ、骨なし魚の缶詰も含まれた。
一般的な微量栄養素の不足を解消するために、どの食品を優先的に摂取すべきかについての洞察を与えるものであると結論。
Priority Micronutrient Density in Foods
*妊娠適齢期(WRA)にある女性の微量栄養素密度スコアの集計結果
WRAは微量栄養素の栄養不良のリスクが高い世界最大の人口グループであるため、本文ではWRAの結果を強調する。
WRAのビタミンA、葉酸、ビタミンB12、カルシウム、鉄および亜鉛の推奨摂取量の平均3分の1を摂取するために必要なカロリーおよびグラムの量は食品によって大きく異なる。
WRAに必要な微量栄養素総密度が非常に高い食品には、内臓(牛、山羊、ラム、鶏、豚のレバー、脾臓、腎臓、心臓)、小型乾燥魚、Dark green leafy vegetables(DGLV)、二枚貝(アサリ、ムール貝、カキ)、甲殻類、山羊、牛、卵、牛乳、骨付き魚缶、ラム/ムトン、チーズが含まれる。
微量栄養素の総量が多い食品は、ヤギ乳と豚肉。
微量栄養素の総密度が中程度の食品には、ヨーグルト、鮮魚(海水魚と淡水魚の異なる種を含む)、豆類、テフが含まれる。
分析に含まれるその他の食品はすべて、WRAの微量栄養素の総量密度が低いと採点された。
下の図は、妊娠適齢期の女性のビタミンA、葉酸、ビタミンB12、カルシウム、鉄、亜鉛の推奨摂取量の3分の1を摂取するために必要なカロリー(向かって左)とグラム数(向かって右)。
*妊娠適齢期の女性の個別微量栄養素密度スコア
二枚貝はWRAに必要な6 種類の微量栄養素の全てについて、少なくとも中程度の密度で含有する唯一の食品。葉酸を除くすべての微量栄養素について非常に高い密度(以下、「トップソース」)で含有し、その密度は中程度。
ほとんどの動物性食品とDGLVは、2種類以上の微量栄養素のトップソースだった。
その他の野菜、根菜類、豆類、ナッツ類、精製穀物を除くすべての食品は、6種類の微量栄養素のうち少なくとも1種類を中程度の濃度で含んでいる。
鉄分は内臓、二枚貝、干物、ヤギ、テフが上位を占めた(図2、図3)。
亜鉛の主な摂取源は、内臓、二枚貝、甲殻類、ヤギ、牛肉、卵、骨付き魚の缶詰、ラム/マトン、チーズ、豚肉(図2)。
ビタミンAは、レバー(牛、山羊、羊、鶏、豚のレバーを含む)、小魚の干物、DGLV、二枚貝、卵、牛乳、チーズ、ビタミンA豊富な野菜・果物が上位。
カルシウム源は、小魚の干物、DGLV、二枚貝、牛乳、骨付き魚の缶詰、チーズ、ヤギミルク、ヨーグルトが上位。
葉酸は、レバー、DGLVs、卵、豆類、キヌアが上位。
ビタミンB12の主は、内臓、小型乾燥魚、二枚貝、甲殻類、反芻動物の肉、卵、牛乳、チーズ、魚の缶詰、豚肉、ヨーグルト、鮮魚が上位。
下の図3は妊娠適齢期女性が推奨される鉄分摂取量の3分の1を摂取するために必要なカロリーとグラム数。
下の図は成人(25歳以上)のビタミンA、葉酸、ビタミンB12、カルシウム、鉄および亜鉛の推奨摂取量の3分の1を摂取するために必要なカロリーとグラム数。
25歳以上の成人の微量栄養素密度スコア
下の図は25歳以上の成人の鉄分摂取量の3分の1を摂取するために必要なカロリーとグラム数。
・今回の分析では動物性食品とDGLVが優先的な微量栄養素の供給源の上位を占めていた。
興味深いのは、ほとんどの果物や野菜、ナッツや種子、全粒穀物、そして鶏肉や魚の缶詰などの動物性食品など一般に栄養価が高いとされる食品の多くは、LMICsで不足しがちな微量栄養素を特に多く含んでいないこと。
しかしもちろん、それらの食品は特定の栄養素以外にも重要な栄養学的利点を備えている。
・今回の研究は、妊娠中の女性やWRAが微量栄養素必要量を満たすために特に栄養密度の高い食品を必要とすることを示し、優先すべき食品を特定するのに役立つ。
栄養不良に対処しようとするプログラムや政策では、内臓、小型乾燥魚、DGLV、二枚貝など、一般に不足している微量栄養素を最も高密度に含む食品を推進すべき。
・動物性食品には優先摂取すべき微量栄養素が豊富に含まれている。DGLVに加え、卵と乳製品はラクト・オボ・ベジタリアンにとって優れた優先微量栄養素の供給源となる。
卵と乳製品は、内臓や小魚ほどではないにせよ優先栄養素密度当たりの価格がより手頃な動物性食品のひとつ。
・DGLVと豆類は、ほとんどの人口集団にとっていくつかの優先的微量栄養素の入手可能で手頃な供給源である。テフ、キノア、フォニオ、キビなどの伝統的な穀物は、少なくとも鉄、亜鉛、葉酸が適度に含まれており、栄養素の充足に大きく貢献する。
卵、乳製品、DGLV、豆類、伝統的な穀物を豊富に含むラクト・オボ・ベジタリアン食は、6種類の優先微量栄養素のすべてを十分な量で摂取することができる。
・妊娠中の女性や幼児など栄養要求量が増加する集団がビーガン食を実践する場合、ビタミンB12に加えて、鉄など他の微量栄養素の強化や補給が必要となる可能性が高い。
・持続可能な生産可能性が最も高く、栄養密度の高い食品は、海藻、二枚貝、小魚。
・世界で18億人を超えるWRAの非常に高い鉄分要求量は、食品だけで持続的に達成するのは困難なため、サプリメントの摂取を検討する必要がある。
・ビタミンC、ビタミンE、リボフラビン、チアミン、ナイアシン、カリウム、マグネシウムなど、その他の必須ビタミンやミネラルも食事で不足することがありますが、これらの不足がどの程度世界的に広がっているか、公衆衛生上の重要性についてはデータが限られている。
・砂糖、ナトリウム、トランス脂肪、化粧品添加物など過剰摂取が疾病リスクの増大につながる化合物が数多く存在し、食品加工の種類とレベルが重要な役割を果たしていることが多い。
・植物主体の食生活に、栄養密度の高い動物性食品(例えば内臓、小魚、二枚貝)を少量加えるだけでも、不足しがちな微量栄養素を十分に確保する上で大きな効果がある。