本日のブログは、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12摂取量と全死因死亡率および特定死因死亡率との関係を包括的に調査した過去最大の研究をまとめてみたい。
研究は、第3回全国健康栄養調査(NHANES III)およびNHANES1999-2014の成人55,569人を対象とし、Cox比例ハザードモデルを用いて全死因死亡率および原因別死亡率と食事性葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12摂取量の関係を調査。
葉酸とビタミンB6摂取量は、男性では全死因、心血管イベントおよびがんによる死亡率と、女性では全死因および心血管疾患による死亡率と逆相関していた。
男性では、葉酸とビタミンB6の五分位値が最も高い場合と最も低い場合の多変量ハザード比は、全死因死亡率でそれぞれ0.77と0.79、CVD死亡率で0.59と0.69、がん死亡率で0.68と0.73だった。女性では、葉酸とビタミンB6の最高五分位と最低五分位の多変量ハザード比は、全死因死亡率でそれぞれ0.86と0.88、CVD死亡率で0.53と0.56だった。
食事性ビタミンB12と全死亡率および原因別死亡率との間には有意な関連は観察されなかった。
結論として、葉酸とビタミンB6は食事からの摂取量が多いほど、全死亡率および心血管死亡率の低下と有意に関連していた。
Intakes of Folate, Vitamin B6, and Vitamin B12 in Relation to All-Cause and Cause-Specific Mortality: A National Population-Based Cohort
・食事性葉酸摂取量と全死因死亡率および特定原因死亡率との逆相関という今回の結果は、いくつかの先行研究と一致している。
スウェーデン・マンモグラフィー・コホートでは、食事からの葉酸摂取は乳がん女性の全死亡リスクの低減と関連することが示唆されている。
日米共同コホート研究では、食事性葉酸摂取は、男性では心不全による死亡率の低下と関連し、女性では脳卒中、冠状動脈性心疾患、心血管疾患全体による死亡率の低下と関連することが示された。
また、心血管疾患リスクが高い参加者において、葉酸摂取が全死因およびCVD死亡率の低下と関連していることが示唆された。
スペインの研究では、葉酸摂取は男性では虚血性心疾患および脳血管疾患による死亡リスクの低下と関連し、女性では脳血管疾患による死亡リスクの低下と関連することが明らかになっている。
一方で、一貫した結果が得られていない研究もある。
米国の別の研究では、食事性葉酸は全死因死亡率にも乳がん特異的死亡率にも関連しなかったと報告されている。
この矛盾は、健康アウトカム、研究方法、研究集団、研究地域のばらつきなど、一連の要因によるものである可能性がある。
・食事性ビタミンB6摂取量と死亡リスクとの関連に関する過去のデータは限られている。
食事性ビタミンB6摂取と男性の全死亡、心血管死亡、がん死亡、および女性の全死亡、心血管死亡との逆相関という今回の結果はいくつかの先行研究と一致している。
3件のプロスペクティブ・コホート研究により、食事性ビタミンB6の摂取量が多いほど、全死亡、心血管系死亡、および前立腺がん死亡のリスクが低いことが明らかにされた。
一方で、今回の結果とは対照的に、食事性ビタミンB6の摂取と心血管死亡率との間に有意な関連は観察されなかった研究も複数あるが、これらの先行研究のうち1件は生態学的分析で、3件はがん患者を対象とし、他の3件は中高年者を対象としたものであった。従って、今回の研究と直接比較することは難しい。
・過去に食事性ビタミンB12の摂取量と死亡リスクとの関係を調べた研究は7件しかない。
4つの研究では、食事性ビタミンB12の摂取量が多いほど、一般集団における脳血管疾患による死亡リスク、およびがん患者参加者における全死因およびがんによる死亡リスクが低下すると報告しており、これは今回の結果と類似している。
一方で他の3つの研究では、全死亡、乳癌特異的死亡、前立腺癌特異的死亡、大腸癌特異的死亡については有意な関連を認めなかった。
さらに興味深いことに、日米共同コホート研究では高齢男性において食事性ビタミンB12摂取量と脳卒中死亡率との間に正の相関が認められた。
しかしここでも、研究集団や研究方法の異質性を考慮すると今回の研究を直接比較することは困難。