世界中の栄養学の専門家が食事クオリティや微量栄養素の重要性を毎日のように発信しているが、現代社会では利便性の追求から家庭での調理時間は減少し、外食やファストフードに頼ることが増え、調理済み加工食品市場は拡大し続けている。
本日のブログは、妊娠中の加工食品(缶またはプラスチック容器に保存された飲料など)の消費と妊娠転帰との関連を調べた日本の研究をご紹介したい。
加工食品の摂取と死産や早産などの出生時の転帰や、体格(SGA)や低出生体重児などの発達指標との関連性を明らかにすることは公衆衛生政策において非常に有益であるにもかかわらず、現在そのテーマに関してはほとんど調査されておらず、年々変化する新しい食生活様式の選択が人間の健康に与える影響については決定的な証拠はまだない。
加工食品の消費は、ビスフェノールA(BPA)やフタル酸ジ(DEHP)など、内分泌機能を乱す可能性のある化学物質への曝露と関連しており、リンクのデータを発表した研究者達の過去の研究では、流産を繰り返す女性において血清BPA濃度が対照群よりも有意に高いことが示されている。
リンクのデータは、妊娠中の加工食品・飲料の摂取と妊娠転帰との関連を検討することを目的とし、104,102人の子ども(胎児または胚を含む)を対象に、妊娠第1期と第2・3期に質問票によるデータを収集。
死産の発生率は、中程度(週1~2回)と高頻度(週3~7回以上)のレディミールや冷凍食品摂取群で高かった。
妊娠中の加工食品の摂取は慎重に検討する必要があると結論。
Impact of Ready-Meal Consumption during Pregnancy on Birth Outcomes: The Japan Environment and Children’s Study
・妊娠中の加工食品や冷凍食品の摂取が死産リスクを高める可能性を示した初めての大規模出生コホート研究。
・4種類の加工食品が死産リスクの上昇と関連し、電子レンジ加熱を必要とする食品の摂取は死産リスクと有意に関連していた。電子レンジで調理する過程で放出される食事包装に含まれる化学物質への曝露が出産時転帰に影響を与える可能性があることを示唆している。
・食品包装に使用されているBPAは死産リスクと関連する化学物質である可能性がある。BPAの耐容摂取量は、欧州食品安全機関によって0.05 mg/kg b.w./dayと規定されている。
電子レンジ調理はBPAの移行を増強することが報告されており、日本人の缶詰からのBPA年間摂取量は2011-2012年には644ng/人・日であると推定された。
BPAは酸化防止剤あるいは食品包装に多く使用されるポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、の製造において使用される。
BPAへの曝露は、耐容1日摂取量よりも低い用量でもヒトの生殖機能に影響を及ぼす可能性があることが示されている。
・加工食品の摂取によるDEHPを含むフタル酸エステル類への曝露は、流産や早産などの有害事象のリスク上昇と弱い関連性を示した。
動物モデルを用いた最近の研究でも、BPAとDEHPの複合的な妊娠予後への悪影響が示されている。
・飲料の摂取量と死産リスクとの関連を明らかにした。飲料の摂取は、「缶やペットボトル」、「コーヒー豆や茶葉から抽出したもの」に分類され、これらの飲料の摂取は、早産、SGA、低出生体重児のリスク上昇と関連していた。カフェイン摂取は、早産、および低出生体重と関連している。WHOは、妊娠中の1日のコーヒー消費量は3~4杯を超えないよう推奨している。過去のメタアナリシスでは、カフェインの大量摂取は死産を含む妊娠損失リスクを増加させることが示されている。
・社会経済的地位が加工食品の消費とその結果としての肥満率の上昇に関係することが示唆されている。健康リテラシーの低さが、貧しい食生活を含む不健康なライフスタイルの原因として関与している。
・加工食品および飲料の消費政策の策定は人の健康以外の分野にも影響を及ぼすため、包括的かつ学際的なアプローチが必要であることを示唆している。
結論
今回の結果から、妊娠中の加工食品・飲料の摂取は死産を含む有害な妊娠転帰のリスクを高めることが示唆された。
この知見は、食品包装に含まれる化学物質への曝露によるものであり、電子レンジ調理によって増加する可能性がある。
深刻な有害転帰を防ぐために、食事と栄養に関するアドバイスを出生前カウンセリングに含めるべきであることを示唆している。