高齢者の増加は世界的現象で、今後30年間でさらに加速する。
平均寿命延長に伴って、女性の更年期における疾患が深刻な問題となっている。
女性ホルモンの低下は、性機能障害、性欲減退、体調変化などの内分泌・機能障害、性欲減退、リポタンパク質レベルの変化、肥満リスク増加などの内分泌・機能障害を引き起こし、さらに、肥満、心血管疾患、2型糖尿病(T2D)などの心血管代謝疾患のリスクが高める。
めまい、疲労感、寝汗、うつ、ほてり、フラッシュ、睡眠障害、骨粗しょう症、メタボリックシンドロームの原因にもなる。
T2Dは世界で最も多く見られる糖尿病として世界の糖尿病患者の90%を占め、2025年には世界で3億人に達すると予想されている(個人的にはコロナパンデミックの影響で増加率は予想より大きいと思う)。
食生活の見直しやトレーニングの導入など、生活習慣の改善を促す情報発信が常に行われているが、現状は・・・。
また、T2Dと同様にビタミンD欠乏症が世界的な流行となっている。
閉経後の女性は、加齢による転倒防止と骨の健康維持のためにビタミンD摂取が推奨される。
しかし、糖尿病を持つ高齢女性におけるビタミンDの補給と体力の関係は検討されていない。
リンクの研究は、2型糖尿病(T2DM)を有する閉経後の女性を対象に、12カ月間のビタミンD補給が体力の構成要素に及ぼす影響を検討した小規模研究。
T2DMと診断された閉経後の女性35名が参加し、12ヶ月間にわたって1000IU/日のビタミンDを補給。被験者は6カ月間隔で空腹時採血、体組成評価、臨床検査、身体検査を行った。
結論
閉経後の女性のビタミンD補給は、血清ビタミンDレベルを上昇させ、筋力レベルを向上させ筋機能の改善を促進し、T2Dや加齢に伴う合併症の抑制に役立つと考えられる。
血清ビタミンDが有意に増加し、WHRが低下したことから、更年期障害による体脂肪の再配分に有効である可能性が示唆された。
12ヵ月間、患者は体格、除脂肪体重、筋力を維持した。
したがって、ビタミンを補充することに禁忌がない場合、高齢の糖尿病女性にビタミンD補給が有効であることを示す予備的証拠と考えることができる。
Effects of 12 Months of Vitamin D Supplementation on Physical Fitness Levels in Postmenopausal Women with Type 2 Diabetes
・閉経後の女性のビタミンD欠乏の原因としては、日光浴の少なさとビタミンD生産能力の低下、腎機能の低下、消化管からのビタミンDの吸収率の低下、ビタミンの吸収と代謝を阻害する可能性のある複数の薬剤の使用などが考えられる。
・過去の研究では、閉経後女性のビタミンD摂取量は1000IU/日以上が望ましいと結論づけている。
・本研究では、ビタミンDの補給だけで神経筋マーカーの有意な増加が観察された。また、加齢に伴う除脂肪体重の減少を抑制するとともに、体脂肪の分布を変化させ、WHRなどの指標を変化させるという、T2D患者に特徴的な影響をもたらした。
・体内でのビタミンD利用率は,血漿中の25 (OH) D濃度を測定することで評価される 。国際骨粗鬆症財団および内分泌学会の推奨では、24ng/mL以上の濃度で転倒率が減少し、30ng/mL以上で骨折率が減少するとされている。
本研究の参加者は、試験開始時には基準値を下回っていたが、毎日のビタミンD補給(1000IU/日)により6ヵ月以内に望ましい分類(32ng/mL以上)を達成し、12ヵ月後も維持した。
・ビタミンD血中濃度の低下は、筋機能の変化と関連する。
ビタミンD受容体(VDR)は筋組織に存在し、筋タンパク質合成の活性化に関与していることから、筋肥大のための重要なエージェントであることを意味している。
ある研究では、ビタミンD補給すによって血清VDR濃度を30%、筋線維量を10%増加させることができたという結果が出ている。
・ビタミンD欠乏は、姿勢バランスの回復時に最初に動員される速筋の筋萎縮でを誘発する。この事実は、血清中の25 (OH) Dレベルと転倒との逆相関を説明している可能性がある。
・本研究結果は、ビタミンD補給によって筋肉の酸化能力が変化し、筋機能を向上させることができるという、他の文献に報告されているデータを裏付けるものだった。
・上記の体力測定に加えて体組成を評価するために、体格測定と生体インピーダンスを実施した。その結果、WHR測定のみが有意な改善を示し、WHRは12ヶ月間で4.08%減少した。閉経後は、女性は腰部の脂肪層の厚さが減少し、内臓領域で増加するのが一般的である。
一方、12ヵ月間の追跡調査では、体重、除脂肪量、脂肪に有意な変化はなく、維持された。