膣内フローラケアが話題になっている。
目的は妊活であったり細菌性膣炎の治療であったり様々。
健康な女性の膣内には”膣マイクロバイオーム”と称される様々な好気性および嫌気性細菌が生息している。妊娠適齢期女性の膣内には10種類以上の細菌が生息しており、生理的機能の維持、病原体の防御、泌尿生殖器疾患の予防に役割を担っている。
中でも乳酸菌は健康な膣微生物叢を支配し、様々な潜在的メカニズムを通じて有益な効果を発揮する。一方で、乳酸菌の不足は様々な生殖系障害や有害な妊娠転帰と関連している。
乳酸菌はプロバイオティクスやポストバイオティクスのサプリメントとして使用され、その安全性は証明されている。
近年、ポストバイオティクスやプロバイオティクスが分解してできる生成物が健康を促進することや、病気を治療する能力に関する証拠が増加し注目を集めている。
現在まで抗炎症作用、免疫調節作用、抗酸化作用、抗がん作用が様々な研究で報告され、治療薬や予防薬としての有効性を支持する有力なエビデンスが示されている。
乳酸菌ベースポストバイオティクスが膣の健康にもたらす潜在的効果についても、近年関心が高まっており、プロバイオティクスとポストバイオティクスによる介入は女性の生殖機能を高める可能性がある。
一方で、男性の生殖能に影響を及ぼす可能性はどうだろう?
精子は膣内で著しく高濃度の乳酸桿菌および乳酸桿菌ベースポストバイオティクスに遭遇する。無防備な精子は膣内環境を移動して子宮頸管を通過し、この段階で膣分泌液とプロバイオティクス分泌液の両方を含む乳酸菌豊富な膣内環境は精子の生存率と機能に微妙な役割を果たし、受精率と妊娠率に影響を与える。
しかし、市販サプリメントの膣プロバイオティクス坐剤の使用によるポストバイオティクス濃度上昇がヒトの精子の質に及ぼす潜在的な影響と用量依存性についてはまだ十分に調査されていない。
in vivo研究では、ポストバイオティクスに加えて、生きた膣内活性微生物叢の有益作用と有害作用の両方が精子の質に影響を及ぼすことがわかっている。
リンクの研究はラクトバチルス・ラムノサスPB01(DSM 14870)のポストバイオティクスが精子の質パラメーターに対する用量および時間依存的効果を評価することを目的としたもの。
試験管内で試験を行うことで女性の生殖管からの潜在的な交絡因子や膣内細菌の物理的付着による精子運動性の低下など物理的影響を排除し、精液分析に加え、精子のDNA断片化指数(DFI)および形態を評価、精子の質を包括的に評価している。
【結果】
低濃度(5%)のラクトバチルス・ラムノサスPB01(DSM 14870)ポストバイオティクス(PB5)は、どの時点においても精子の運動性、運動学的パラメーター、精子DNAの断片化、正常な形態に悪影響を及ぼさなかったが、ポストバイオティクス濃度が15%の場合、運動性の高い精子の割合が有意に減少した。50%濃度にすると、曝露直後から無動精子の割合が有意に増加し、この影響は90分まで続いた。
精子の形態はポストバイオティクスの補充によって影響を受けなかったが、50%濃度で90分間暴露すると、精子のDNA断片化が有意に増加した。
・精子の運動性、包括的な運動学的パラメータ、およびDNA断片化に対するポストバイオティクスの影響を検討した初の試験。
・この研究結果は、ラクトバチルス・ラムノサスPB01(DSM14870)PB5のポストバイオティクスの安全性を強調し、精子の質に対する穏やかな効果を確認した。
・プロバイオティクスの間接的な効果は、プロバイオティクスによって分泌、あるいはプロバイオティクスが崩壊・溶解した後に放出される生理活性化合物「ポストバイオティクス」と関連し、ポストバイオティクスには、リポ多糖、ペプチドグリカン、リポテイコ酸、細胞外小胞、酵素、ペプチド、有機酸などが含まれる。ポストバイオティクスはプロバイオティクスと同様の有益な治療効果をもたらしながら、安全性が高く、経済的な利点があることから、プロバイオティクスよりも優れていると考えられている。ポストバイオティクスは使用や保存が容易で、幅広い環境で安定するという利点があり、代謝、免疫調節、抗がん、抗酸化機能に有益な効果を同時にもたらす。
・最近の臨床試験で、ラクトバチルス・パラカゼイProSci-92とラクトバチルス・ラムノサスProSci-109のポストバイオティクスが膣乳酸桿菌の相対的存在量を増加させ、膣微生物叢の組成を調整することで異常膣分泌物を改善したため、細菌性膣炎に伴う臨床症状の緩和に有効であることが実証された。
・この研究におけるポストバイオティクスは、1×106 L. paracasei ProSci-92および1×106L. rhamnosus ProSci-109発酵液(37℃でpH4.60に発酵)にKabo 940、トリエタノールアミン、プロピレングリコール、PEG-90M、保湿ゲル、フェノキシエタノールを添加してゲル化したもので、1日量3mgをゲルカテーテルを用いて膣深部に1週間投与した。健康な膣は一般に24時間で4.65±1.8mgの膣分泌物を産生する。したがって、3mgのゲルを使用した場合、膣内のポストバイオティクス濃度は48.72%~68.25%となる。この場合、高レベルのポストバイオティクスが膣内環境に沈着した精子に影響を及ぼす可能性がある。
・精子の運動率は男性の生殖能力を予測する重要因子。総運動精子数の割合は、対照群、PB5群、PB15群で差がなかったが、PB15では試験期間中、対照群と比較して直進性運動精子の割合が有意に低下した。従って、PB15は妊娠成功率にマイナスの影響を与えたと推測される。
・ポストバイオティクスへの曝露直後と、曝露後60分および90分における精子の運動性を評価した。運動学的パラメータはこれらの傾向を反映しており、PB50はすべての時点でVSL、VCL、VAP、STR、WOB、ALH、BCF値が有意に低かった。PB5はベースラインでは影響を示さなかったが、VCL、VSLおよびVAPは60分間のインキュベーション後に低値を示したが、これらの変化はPB5における運動性精子および前進性精子の割合に影響を与えるほど大きくはなかった。つまり、低濃度のポストバイオティクスの補充は女性の生殖管内での移動中に卵子に到達する精子の能力に影響を与えないということである。
・他の研究では、乳酸菌が精子の細胞内Ca2+に付着し、悪影響を及ぼす可能性があることを示した。Ca2+は精子の運動性を制御し、受精を成功させる上で極めて重要な役割を果たしている。したがって、膣内ポストバイオティクス坐薬は必須栄養素(例えば、Ca2+)の細胞内濃度を低下させることで精子の機能と運動性に影響を与える可能性が示唆される。
・プロバイオティクス分泌物は、抗菌作用を持つ二次代謝産物の分泌(乳酸、過酸化水素、バイオサーファクタントなど)を通じて病原性微生物の増殖を阻害することで、精子にとってより好ましい環境を提供する可能性もある。また、動物モデルやヒトにおいて、プロバイオティクスの経口摂取が生殖ホルモンレベルの調節や抗炎症反応を介して精子の質にプラスの調節的影響を与えることが実証されている。
・精子はDNA損傷修復システムを持たないため、過度の酸化ストレスや精漿中の他の物質(遊離ヌクレアーゼなど)が射精後の精子DNAの完全性を破壊し、受精率や胚の発育に悪影響を及ぼす可能性がある。PB50は有意に高いDFIを示したが、PB15とPB5は90分培養後もDFIに変化は見られなかった。このことは、低用量ポストバイオティクスは精子のDNA品質に影響を及ぼさないか、あるいは、培養時間がDNAの完全性に及ぼす悪影響に対して保護的な役割を果たしたことを示唆している。これまでの研究で、プロバイオティクスの経口補充がヒト精子のDFIを低下させることが示されている。
いかがでしたか?
妊活におけるプロ・ポストバイオティクスの使用はタイミングや用量が重要なキーになりそうだというデータでした。
参考になれば幸いです。
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