今回のブログは、ゴルフプレイ時に特化したスポーツ栄養学についてデータをまとめてみたい。
ゴルフは競技としてプレーする場合、高い認知的負荷、重要なショットの決断、手と視線の協調、高度な運動能力と生体力学的技能、他の多くのスポーツを上回る長時間におよぶプレーを伴い、特に重要なショットの決断と最大限の力発揮を要するスイング、パッティング、長距離歩行などが組み合わさると、肉体的・精神的疲労すなわちゴルフ特有の疲労が生じ、ゴルフパフォーマンスに悪影響を及ぼす。
米国スポーツ医学会(ACSM)は持久系アスリートに対し、1時間以上の運動を行う際の疲労を遅らせるためには1時間あたり30~60gの割合で炭水化物を摂取することを推奨している。
しかし、この30~60gの炭水化物摂取がゴルファーに及ぼす影響については未だ検討されていない。
2009年の研究では、ラウンド前とラウンド中6番ホールと12番ホールの3回に炭水化物を摂取することで、2mと5mのパットで測定された運動能力と認知能力の両方が向上することがわかっている。
ゴルフ中の低血糖は集中力の低下、過敏性、判断力の低下、認知能力の低下および自己評価による疲労度の増加につながる可能性がある。
したがって、18ホールにわたって血糖を維持するには特定の栄養計画が必要である。
リンクの研究は、ゴルフラウンド中の継続的な炭水化物摂取が競技ゴルファーのグルコースレベル、ゴルフパフォーマンスおよび認知能力に及ぼす影響を検討したもの。
11人の競技ゴルファーが18ホールのゴルフを行い、試験食品を摂取するよう指示された群(CHO摂取群)と摂取しないよう指示された群(非摂取群)に無作為に振り分けた。
ここでは試験食としてグミを用い、炭水化物の量は1時間あたり30gとした。
血糖値は間質グルコースを用いて評価。
ゴルフの成績は、スコア、2.5mパッティングテスト、クラブヘッドスピード、ドライビングディスタンス、正確性の5つのテストで測定。
認知能力は、自己認識疲労レベル(PLF)、自己認識集中レベル(PLC)、自己認識リラックスレベル(PLR)の3つで測定。
結果
PLFは6ホール目からCHO摂取群ではNOT摂取群に比べて有意に減少した。PLCは18ホールすべてにおいてNOT摂取よりもCHO摂取の方が有意に高かった。
継続的な炭水化物摂取が競技ゴルファーの疲労軽減とパフォーマンス維持に有効である可能性が示唆された。
・この研究では、ゴルフのラウンド中にグミによる炭水化物摂取を継続することはゴルフのパフォーマンスには効果が認められないものの、間質グルコース濃度の低下を防ぎ、疲労を軽減する可能性があることがわかった。さらに、ラウンド中の集中力を持続させる可能性も見出された。
・グミによる継続的な炭水化物摂取は、4~6ホール目、7~9ホール目、10~12ホール目、13~15ホール目、16ホール目の間質グルコース低下を防ぐことがわかった。さらに、ラウンドの後半では間質グルコース値の低下は観察されなかった。
ゴルフラウンド後半(9ホール)のCHO摂取による間質グルコース値の変化率は+3.4%で、ラウンドの後半で間質グルコースレベルを維持するのに十分な量の炭水化物が試験食に含まれていたために生じたものである。
本研究で使用した試験食には162.5gの炭水化物(糖質155.3g)が含まれていた。
・朝食時の炭水化物摂取も結果に影響を与えたと考えられる。体重1kgあたり1.02kgの炭水化物を含む朝食を摂取した。
・グミによる継続的な炭水化物摂取は、6、9、12、15、18ホール目のPLFの上昇を抑えた。この研究では疲労度の上昇と間質グルコース濃度の低下が同時に認められた。
・集中力低下は、間質グルコースレベルの低下と疲労の増加の後、しばらくしてから観察される。
したがって、ゴルフラウンドの前半における継続的な炭水化物摂取がラウンド中盤以降の疲労度を軽減し、2ラウンド目以降の集中度を維持すると考えられる。
・この研究では入手が容易なグミを選択したが、パン、おにぎり、ドライフルーツなど、炭水化物含有量が高く、摂取が容易な他の食品を用いても達成可能である。競技ゴルファーはゴルフプレー中の疲労を防ぐために、炭水化物を多く含む食品を持続的に摂取すべきと考えられる。