子宮内膜症では、局所的な免疫、炎症、血管新生、酸化ストレスの変化といったいくつかの要因が重要な役割を果たすと考えられている。
「酸化ストレス」とは、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、アルブミン、セルロプラスミン、ビタミンC、ビタミンE、尿酸、HDLコレステロールといった抗酸化因子と活性酸素過剰生成の間のアンバランスと定義されている。
酸化ストレスは心血管疾患や神経疾患の背後にある病的プロセスにも関与し、子宮内膜症の発症や進行にも重要な役割を果たしていることが報告されている。
具体的には、過度の逆行性月経に誘発されるヘモグロビン鉄などの酸化性分子の過剰負荷によって腹膜が傷つき、異所性子宮内膜細胞の接着を促進し、Nf-kB活性の増幅を誘発する可能性がある。そして、炎症性サイトカイン、成長因子、血管新生因子、接着分子、誘導性酵素などを誘導し、子宮内膜症が進行する。
この腹腔内の状態は、酸化ストレスの上昇を伴うことが報告されている。
リンクの研究は、全身的な酸化ストレスと子宮内膜症の関連、およびホルモン避妊薬の使用中に子宮内膜症がどのように変化するかを評価したもの。
非子宮内膜症女性24名、子宮内膜腫女性26名、子宮内膜腫の有無にかかわらず深部子宮内膜症 (DIE)のある女性26名の毛細血管でフリー酸素ラジカル(FORT)およびフリーオキシダントラジカル防御(FORD)を測定。
食事要因、生活習慣、酸化状態を阻害する物質の摂取を記録。
女性には避妊用ホルモンを処方し、使用開始3ヶ月目にベースライン評価を繰り返した。
子宮内膜症女性では対照群と比較して酸化ストレスバランス(FORT/FORD)が高いことが判明した。
最も高い値を示したのは、DIEを有する女性だった。
回帰分析により、FORT/FORDと子宮内膜症との間に独立した関係があることが明らかになったが、HDL-コレステロールとは負の相関があった。
対照群ではホルモン療法はFORTを増加させ、FORDも増加させたが、FORT/FORDのバランスは安定した。
子宮内膜症の女性ではFORTは変化しなかったが、FORDは増加し、FORT/FORD比は有意に減少し、コントロールと同程度の値となった。
これらのデータは、子宮内膜症の女性、特にDIEを持つ女性では全身の酸化ストレスバランスが増加しており、ホルモン療法は子宮内膜症、特にDIEを患う女性では酸化ストレスバランスを有意に改善させることを示している。
Systemic Oxidative Stress in Women with Ovarian and Pelvic Endometriosis: Role of Hormonal Therapy
・子宮内膜症、特にDIEを有する女性はフリー酸素ラジカル(FORT)と抗酸化物質(FORD)の比で、全身の酸化ストレスが増加していることを示した。
しかし、これらの女性で見られた酸化ストレス増大は、エストラジオールベースのホルモン避妊薬の投与によって改善された。
・FORTとFORDの値は、抗酸化酵素パラキソナーゼを表面に持つHDL-コレステロールの値が高い場合や、お茶やココアに含まれるフェノール化合物といった抗酸化物質の摂取量が多い状態、すなわち抗酸化防御が高い場合には酸化ストレスが低いことを示した。
・一方で、FORT/FORD酸化ストレスバランスはフリーラジカル産生が多い状態、すなわち、肥満、グルコース代謝の変化、フェリチン増加、アルコール摂取、身体活動で増加した。
・FORT/FORD比は、DIE女性はコントロールよりも高く、腹腔内酸化ストレスの増加が全身循環に反映されていることが示された。
・酸化状態は子宮内膜腫単独よりもDIEと密接に関連していた。実際、DIE結節は血管の減少に関連しており、その結果生じる虚血は酸化ストレスを増加させる可能性がある。
・すでに酸化ストレスバランスが上昇している女性に対するホルモン避妊薬の効果を観察するのは興味深い。子宮内膜症(酸化ストレスの高い)女性では、FORTは減少し、FORDは有意に増加した。
治療前はFORT/FORD比は対照女性より著しく高かったが、エストロゲンベースのホルモン療法中は、子宮内膜症女性のFORT/FORD比が対照女性のレベルに戻った。
結論
エストラジオールベースホルモン避妊薬は、子宮内膜症の女性における酸化ストレスを軽減する可能性がある。